八ヶ岳の最高峰・赤岳を、いつか自分の足で登ってみたい。
そう思いながら、なかなか踏み出せずにいる方は多いと思います。
体力に自信がない。岩場が不安。山小屋泊をしたことがない。いきなり本格的な縦走は怖い。
そういう気持ちは、とても自然なことだと思います。
私はかつて屋久島で5年間、原生林の中をガイドしていました。あの島で学んだことのひとつは、「ゆっくり歩くほど、見えるものが増える」ということです。八ヶ岳の登山も、それは変わりません。
この記事では、
・初心者はどこから始めればいいか
・赤岳までどんな経験が必要か
・八ヶ岳を少しずつ歩く方法
を、5つのステップで紹介しています。
このシリーズは「最短で赤岳に登る」ためのものではありません。森から始まり、岩場を覚え、稜線を知り、山小屋泊を重ねながら——八ヶ岳を少しずつ深く歩いていくためのシリーズです。
どのステップから始めても大丈夫です
- 登山がはじめての方 → STEP 1から
- 日帰り登山に慣れている方 → STEP 2または3から
- 山小屋泊の経験がある方 → STEP 3または4から
1年で一気に赤岳を目指さなくていい。2〜3年かけて少しずつ歩いていくことで、同じ稜線が以前とは違って見えてくる瞬間があります。
体力(コース定数)について
コース定数は、距離・標高差・傾斜から算出する体力指標です。
🟢(〜10)ゆっくり歩ける体力があれば参加できる
🟡(11〜20)ある程度の歩行習慣がある方向け
STEP 1|白駒池・高見石(北八ヶ岳・初心者向け日帰り登山)
山の楽しさを知る
| 対象の山 | 白駒池・高見石 |
| 体力(コース定数) | 6🟢 |
| 難易度 | ★☆☆ |
| 行程 | 日帰り |
| 事前トレーニング | 不要 |
まずは、標高2,000メートルの北八ヶ岳の森から。
白駒池周辺に広がる苔の森は、歩くたびに足元の感触が変わります。湿った岩、倒木の上に積み重なった何十年分もの苔、光の差し込み方。屋久島の苔と八ヶ岳の苔、どちらも「立ち止まってはじめて見えてくる世界」があります。急いで歩けば通り過ぎてしまうものばかりです。
途中では八ヶ岳の火山の岩や、森の成り立ちも歩きながらお伝えします。
高見石への最後の登りで少し岩が出てきます。そこを越えると、眼下に白駒池が広がります。「自分の足で、ここまで来た」という感覚を、まず体で知ってほしい。それがSTEP 1です。
↓白駒池・高見石のコース詳細はこちら
STEP 2|蓼科山(日帰り・岩場入門)
体力と岩場に慣れる
| 対象の山 | 蓼科山(7号目登山口・往復) |
| 体力(コース定数) | 14🟡 |
| 難易度 | ★★☆ |
| 行程 | 日帰り |
| 事前トレーニング | 軽いウォーキング習慣があると安心 |
八ヶ岳の最北端に立つ、日本百名山のひとつ。
STEP 1よりも体力を使い、山頂に近づくにつれて岩場が増えてきます。「登れるかな」と不安になる場面も出てくるかもしれません。
山での歩き方は、日常の歩き方とは少し違います。疲れにくいペース、岩場での足の置き方、重心の移動——これらは説明よりも、実際に歩きながら体に覚えさせていく方が早い。3点支持の感覚も、ここで少しずつつかんでいきます。
山頂からは、これから歩いていく南八ヶ岳の稜線が見えます。硫黄岳、横岳、そして赤岳。「あそこまで、歩いていけるかもしれない」という気持ちが生まれれば、STEP 2は十分です。
↓蓼科山のコース詳細はこちら
STEP 3|硫黄岳(山小屋泊・稜線入門)
稜線と標高の世界へ
| 対象の山 | 硫黄岳 |
| 体力(コース定数) | 1日目 8🟢 / 2日目 14🟡 |
| 難易度 | ★★☆ |
| 行程 | 1泊2日(オーレン小屋泊) |
| 事前トレーニング | 月2〜3回程度の歩行習慣があると安心 |
ここから、山小屋泊の登山になります。
オーレン小屋に泊まり、翌朝はまだ暗いうちから歩き始めます。ヘッドライトの光の中、樹林帯を抜けていくと、少しずつ空が青みを帯びてくる。森林限界を超えたあたりで稜線に出ると、雲の上に光が走る瞬間があります。
その時間のことを、うまく言葉にするのは難しい。ただ、一度経験すると「また来たい」と思う気持ちの理由が、少しわかる気がします。
稜線を歩くにつれて風が強くなり、ハイマツが低くなり、岩がむき出しになっていく。山頂の爆裂火口は、八ヶ岳がかつて火山だったことを体で感じさせてくれます。山小屋での夜、防寒の調整、長い時間歩き続けること——日帰りでは経験できないことが、ここにあります。
→ 硫黄岳のコース詳細はこちら(作成中。お問い合わせください)
STEP 4|北八ヶ岳縦走(白駒池〜天狗岳〜唐沢鉱泉)
縦走を楽しむ
| 対象の山 | にゅう・天狗岳(東・西) |
| 体力(コース定数) | 1日目 10🟡 / 2日目 12🟡 |
| 難易度 | ★★☆ |
| 行程 | 1泊2日(黒百合ヒュッテ泊) |
| 事前トレーニング | STEP 3までの経験があれば問題なし |
登山口と下山口が違う、縦走の旅。
白駒池の苔の森から始まり、にゅうの展望台に立ち、黒百合ヒュッテに泊まり、翌日は東西の天狗岳を越えて唐沢鉱泉の森へ下りていく。景色が次々に変わり、歩いた距離が地図の上でかたちになっていく感覚があります。
岩場はありますが、蓼科山や硫黄岳で歩いてきたことの延長線上です。「あの時できたから、これもできる」という積み重ねが、ここで静かに形になります。
下山後は温泉へ。山を「旅として歩く」楽しさを、体ごと感じてほしいコースです。
→ 北八ヶ岳縦走のコース詳細はこちら(作成中。お問い合わせください)
STEP 5|南八ヶ岳縦走・赤岳(2泊3日)
八ヶ岳の核心へ
| 対象の山 | 硫黄岳・横岳・赤岳 |
| 体力(コース定数) | 1日目 15🟡 / 2日目 17🟡 / 3日目 14🟡 |
| 難易度 | ★★★ |
| 行程 | 2泊3日(赤岳鉱泉・赤岳展望荘泊) |
| 事前トレーニング | STEP 4までの経験が理想 |
いよいよ、赤岳へ。
初日は美濃戸口から北沢を歩き、赤岳鉱泉へ。2日目は硫黄岳・横岳の長い稜線を歩き、赤岳展望荘に宿泊。3日目の朝、赤岳の山頂を目指します。
山頂直下の岩場は傾斜があります。それでも、ここまで歩いてきた方であれば、知っている動きの積み重ねで登れます。森の歩き方、岩場での足の置き方、稜線での体力の使い方——STEP 1から歩いてきたことが、ここで静かに繋がります。
山頂に立つと、歩いてきた景色が見えます。北のほうに、蓼科山の丸い山頂。硫黄岳の爆裂火口の縁。北八ヶ岳の森の稜線。STEP 1で歩いた白駒池のあたりも、どこかに見えているかもしれません。
いきなり来た赤岳とは、きっと違う山頂だと思います。
→ 南八ヶ岳縦走・赤岳のコース詳細はこちら(作成中。お問い合わせください)
八ヶ岳を、少しずつ深く歩く
STEP 3の硫黄岳まででも、八ヶ岳登山の魅力は十分すぎるほど味わえます。赤岳まで行かなくても、それぞれのステップに、それぞれの山があります。
焦らなくていい。2〜3年かけて少しずつ歩いていくことで、同じ稜線が以前とは違って見えてくることがあります。それがこの山域の面白さだと、私は思っています。
まずは、今の自分に合ったところから。
各コースの詳細・開催日・お申し込みは、各ステップのリンクよりご覧ください。



