【自家製醤油2026】第1回:14kgの小麦を炒る。10年目の春、香ばしい夜の余韻から。準備編①

八ヶ岳の麓にもようやく春の気配が届き始めました。 私にとって、この季節の訪れは「醤油作り」の始まりを意味します。

長女が生まれた年から作り始め、今年でついに10回目。 娘の成長とともに、わが家の食卓を支えてきた醤油作り。今年も8家族で1つの樽を仕込む、壮大な手仕事が動き出しました。

14kgの小麦と、カセットコンロ

醤油作りの第一歩は、小麦を炒る(焙煎)作業から始まります。 用意したのは14kgの小麦。これに同量の大豆を合わせ、4月の初めに「麹(こうじ)」を育てていきます。

現代のキッチンは便利ですが、醤油作りにおいては少し工夫が必要です。 最新のコンロは安全センサーが働いて強火を維持できないため、わが家ではあえてカセットコンロを使い、換気扇の下でフライパンを振り続けます。

一度に炒れるのは、丼一杯分ほど。 それを何度も、何度も。14kgすべてを炒り終えるには、相当な時間と根気がいります。

嗅覚を研ぎ澄ます「炒り」の合図

パチパチという軽快な音とともに、一粒一粒がぷくっと膨らみ、焦げる手前の黄金色になる瞬間を見極めます。

この作業は夜、家族が寝静まった後に一人で行うことが多いのですが、静かな台所に広がるのは**「香ばしい麦茶のような香り」**。

その力強くも優しい香りの余韻に包まれながら眠りにつくのは、この時期だけの贅沢なひとときです。手間はかかりますが、自分の手で一つひとつの素材と向き合うこの時間は、不思議と心を整えてくれます。

2022年、さらなる深みへ。「自家製麹」への転換

実は2021年までは、松本地域の醤油屋さんから麹を分けていただいていました。 しかし、より「自分たちらしい味」を追求したいと考え、2022年からは麹づくりそのものも自分たちで行うようになりました。

  • 小麦14kg(炒って砕く)
  • 大豆14kg(茹でる)
  • 水34L、塩13kg

これらを合わせ、4月の初めには風呂場を「麹室(こうじむろ)」に見立てて、4日間つきっきりで麹を育てます。 その後、小さなビニールハウスの熱を借りて発酵を一気に進め、11月末にプロの搾り師さんに仕上げてもらう。

一升瓶にして約30本。 効率やスピードが重視される現代において、これほど「待つこと」を必要とする調味料は他にないかもしれません。

10年という歳月を味わう

10年前、生まれたばかりの娘を抱えながら、見よう見まねで始めた醤油作り。 10歳になった娘と、今年も同じ香りを共有できていることに、深い喜びを感じます。

自然のサイクルに合わせて、じっくりと時間をかけて育てる。 それは、山を歩くときの一歩一歩に似ているような気がします。

次は、お風呂場での「麹作りの前日準備」についてお届けします。 「わが家の味」が完成するまでの長い旅、よろしければお付き合いください。


【2026年・自家製醤油作りシリーズ】

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