【種まきから食卓まで】10年続く手作り醤油

10年目の味噌・醤油づくり。麹から手掛ける「醸す」喜び

わが家では、味噌と醤油を手作りし始めて、気づけば10年が経ちました。 最初は見よう見まねでしたが、3年前からは大豆と小麦を使い、麹(こうじ)そのものから自分たちの手で作るようになりました。

材料を揃え、菌の力を借りて、ゆっくりと時間をかけて調味料へと変えていく。この「醸す」プロセスから関わる喜びは、何物にも代えがたいものがあります。そのために、毎年15〜20キロの大豆を収穫することを一つの目標に掲げています。

耕作放棄地との格闘。地下茎の強さと、大豆の芽吹き

今期からは、新しくお借りした畑を大豆の拠点にすることにしました。 そこはしばらく使われていなかった「耕作放棄地」。地下茎でどんどん増えていく草が蔓延っていて、開墾は想像以上に骨の折れる作業です。

それでも、土を整え、種を降ろせば、大豆たちは元気に発芽してくれました。厳しい環境の中でも、条件さえ整えば自らの力で芽を出す。その生命力の強さには、毎年背筋が伸びる思いがします。

直播と定植。自然を相手にするための「保険」

畑には直接種をまく「直播(じかまき)」もしていますが、同時にポットで苗を育ててから植える「定植」も併用しています。 というのも、せっかく芽を出す前に、鳥たちに見つかって食べられてしまうことがあるからです。

「きっと大丈夫だろう」と過信せず、万が一のために手を打っておく。 自然を相手にしていると、こうしたちょっとした「保険」の大切さを痛感します。これは、長く土に触れてきたからこそ身についた、ひとつの知恵かもしれません。

畑仕事と登山ガイド。足元の小さな変化を見逃さない視点

こうした畑での時間は、私の本業である登山ガイドとしての姿勢にも深く繋がっています。

目的地に向かって急ぐだけが、山の楽しみではありません。 大豆の小さな芽吹きをじっと見守るように、足元に広がる苔のグラデーションや、雨上がりの森に漂う命の気配。そんな「小さな変化」に気づく感性は、畑で土と向き合う時間の中で、より研ぎ澄まされていく気がします。

日常の延長線上にある、山歩きという時間

手作りの醤油が食卓に並ぶまでには、気の遠くなるような時間がかかります。 でも、その過程にある一つひとつの発見や苦労こそが、暮らしを豊かにしてくれる。

私のガイドツアーも、そんな日常の延長線上にあります。 特別な日を作るのではなく、日々の暮らしで大切にしている「自然への眼差し」を、皆さんと分かち合えたら嬉しいです。

森の宝石箱を覗き込むような、ゆったりとした時間を一緒に歩ける日を楽しみにしています。

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