北八ヶ岳や北横岳周辺を歩いていると、岩の隙間から黄緑色に光って見える「ヒカリゴケ」に出会うことがあります。
ロープウェイ山頂駅から北横岳へ向かう樹林帯でも観察でき、北八ヶ岳を代表する自然観察の対象のひとつです。
私はガイド中によく紹介していますが、多くの方が「本当に光っているんですね」と驚かれます。
この記事では、ヒカリゴケの生態や光る仕組み、北八ヶ岳での見頃や観察のポイントについて紹介します。
北八ヶ岳・北横岳で見られるヒカリゴケとは?
ヒカリゴケは、北海道から本州中部以北の冷涼な地域に分布するコケの仲間です。
岩の隙間や木の根元の空洞など、暗く湿った環境を好みます。
北八ヶ岳では比較的観察しやすく、ロープウェイ山頂駅から北横岳へ向かう樹林帯でも見つけることができます。
ただし、登山道を歩いているだけで目に入るわけではありません。
岩陰や木の根元の暗がりを注意して見ていると、思いがけず鮮やかな黄緑色の反射が目に飛び込んでくることがあります。
ヒカリゴケはなぜ光って見えるのか
ヒカリゴケはホタルのように発光しているわけではありません。
胞子から発芽してできる「原糸体」と呼ばれる部分の細胞がレンズのような形をしており、外から差し込むわずかな光を集めて反射しています。
その反射光が観察者の目に戻ることで、暗い場所でもエメラルドグリーンや黄緑色に輝いて見えるのです。
見る角度によって急に明るく見えたり、逆に見えなくなったりするのも、この仕組みによるものです。
北八ヶ岳のヒカリゴケの見頃は?春より夏から秋がおすすめ
長年ガイドをしていて感じていることがあります。
それは、春よりも夏から秋の方がヒカリゴケを見つけやすいということです。
特に秋には、思わず足を止めてしまうような大きな群落に出会うことがあります。
なぜだろうと思って調べてみると、いくつか理由が考えられそうです。
北八ヶ岳では春になっても樹林帯の岩陰や木の根元に雪や氷が残っています。
ヒカリゴケが生育する場所はこうした残雪の影響を受けやすく、春はまだ観察しにくい場所も少なくありません。
その後、雪解けとともに成長を再開し、夏から秋にかけて群落が発達していくと考えられています。
私自身の経験でも、春より夏から秋の方が大きな群落に出会うことが多く感じます。
北八ヶ岳を歩く機会があれば、ぜひ季節ごとの違いにも注目してみてください。
北横岳周辺でヒカリゴケを探すときのポイント
ヒカリゴケは暗い場所ほど見つけやすくなります。
岩の隙間や木の根元の空洞を正面から覗き込むようにすると、反射した光が見つけやすくなります。
晴天の日中でも観察できますが、周囲が少し暗い場所の方が見つけやすい印象です。
一方で、登山道から外れたり岩を動かしたりする必要はありません。
自然のままの状態で観察することが大切です。
観察するときの注意
北八ヶ岳は八ヶ岳中信高原国定公園に指定されており、貴重な自然環境が保護されています。
植物や岩石などの採取は禁止されています。
ヒカリゴケも限られた環境で生育しているため、岩を動かしたり落ち葉を取り除いたりせず、そのままの状態で観察しましょう。
見つけたら静かに観察し、次に訪れる人にも同じ景色を残しておきたいものです。
ヒカリゴケ図鑑
和名:ヒカリゴケ
学名:Schistostega pennata
分類:蘚類(コケ植物)
分布:北海道、本州中部以北の冷涼な地域
生育環境
- 岩の隙間
- 木の根元の空洞
- 洞窟状の暗い場所
- 湿った土の上
大きさ:コケ本体は数ミリ〜1cm程度
光る仕組み:発光ではなく、原糸体のレンズ状細胞による光の反射
特徴:ヒカリゴケ科・ヒカリゴケ属に属する唯一の種
観察しやすい時期:7〜10月頃
北八ヶ岳で見られる場所
- ロープウェイ山頂駅周辺の樹林帯
- 北横岳周辺
- 坪庭周辺の岩陰
- 亀甲池方面の樹林帯
保全状況:環境省レッドリスト準絶滅危惧(NT)
観察のコツ:暗い岩の隙間を正面から覗くと見つけやすい
北八ヶ岳で見られるコケの中でも、ヒカリゴケは特に印象に残る存在です。
山頂からの展望や高山植物だけでなく、森の中の小さな生きものにも目を向けると、登山の楽しみ方が少し広がるかもしれません。
※観察時期や見られる場所は、その年の積雪状況や環境条件によって変わる場合があります。

